平原の王

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 成人の儀式は夏至の日に行われる、東の山の頂きにある巨大な遺跡、ラ・トールの窓を通った朝日が、町の中央にある暦の柱に当たる時こそ、夏至の日とされていた、この時期は食糧が多くモンスターも比較的穏やかだ、流石に冬至の時期にモンスターに出会えば、死は確実だろう。  普通の動物とモンスターとの違いは厳密には無く、一般に、体長が3m以上、6本以上手足羽がある、半人半獣、人の言葉を話す、など、様々な特徴があるが、肉食動物は、一般にモンスターに分類される。  ザイルの町の南側には草原が広がり、体長2m近い肉食のライオンというモンスターが生息していた。  ザイルの町では、この年も成人の儀式を後10日前後に控え、成人する男達が広場に集められていた。 「何度言ったら判るんだ?ウェイン!」  広場では夏至の日の為に、モンスターに対峙した時にどう対応するか、先輩達からのレクチャーが続いていた。  もうすぐ成人する14歳の若者の中で1番体が大きく、力が強いウェインもその中にいた。 「相手は集団で狩りをするモンスターだぞ!常に周りを警戒して、迂闊に草むらに入るんじゃない!」 「警戒してるよ!剣も抜いてるし、身代わり簑(ミノ)だってちゃんと頭より高い所で持ってる!」 「だから、何で素手で持ってる?棒を使え!食いちぎられるぞ!」  教官役のサマリーは、5年前の成人の儀式で、見事モンスターを追い払った英雄だ、その後、貿易のキャラバンと共に他の町へ旅に出て、去年戻ってきた、他の町で見つけた嫁と共に。 「大体、モンスターの攻撃くらい避けられるっ!こんな邪魔な物、余計に危ないよ。」 「あほか!お前は?」  反論したウェインを一蹴し、サマリーは続ける。 「成人の日に戻って来なかった連中には、俺より強い奴はいくらでもいたんだ!油断が命を落とすんだぞ、それに・・」  サマリーはこの町でも指折りの勇者となっている、そのサマリーでさえ1人で草原に行く事はなかった、成人の儀式は、1人でモンスターに対峙するとはいえ、周囲には成人した男達が取り囲み、いつでも攻撃きるよう控えている。 「それに、草原にいるのはライオンだけじゃない。」  広大な草原だ、確認されていないモンスターもたくさんいる。 「ウェイン、お前は他の連中より力が強く機転もきく、お前が本気で戦えば、もしかしたらライオンの一頭位は倒せるかもしれん。」
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