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それは、町の皆が思っている事だった、ウェインは幼い頃両親をなくし鍛冶親方に預けられ、10歳になる前から鉄を鍛える鎚を握っていた、そのためか他の14歳に比べ力が強く、人の身長とほぼ同じ長さの大剣を軽々と振り回した。
「だったら俺のやりたいようにやらせてくれよ!絶対ライオンを仕留めてやるから。」
幼い頃から、荒々しい鍛冶職人達と暮らしてきたウェインは相手が大人でも臆すること無く話す、それに、ウェインにとって、ライオンは両親の仇だった。
キャラバンで生まれたウェインは、両親と共に街へ戻る途中にライオンの群れに襲われた、キャラバンはほぼ全滅、わずかに生き残った男たちも体の一部を食いちぎられ、意識不明で街に運ばれたが、目を覚ますこと無くそのまま息をひきとった。
「お前がライオンを憎む気持ちは解るが、そんなに熱くなってちゃ獲物は仕留められない。」
サマリーは冷静に話していたが、その冷静さもウェインを苛立たせる。
基本的に、成人するまでは町の外に出られない、ウェインにとっては成人の儀式そのものはどうでもよかった、ただ、成人の日にライオンを仕留められたら、それで良かった。
「そんな事分からないだろ!」
ウェインは成人の儀式が近づくにつれ、落ち着きを失ってきている。
そう感じたサマリーは、ウェインには俺が付いて行こうと思っていた。
「分かった、お前はもう訓練に来なくていい、だが、儀式の準備だけはしておけよ。」
途端にウェインの表情が明るくなる、黒目がちの目が優しさをみせる。
まだ髭も生えず、伸ばした髪を後ろで束ね、浅黒い肌に、目だけがやけに輝いている。
「本当か?ありがとうサマリー!」
本当のところ、サマリーには未成年の訓練を終了させる権限は無い、夏至の日の二日か三日前に、長老たちがその事を告げる。
「そもそも、力だけなら俺より強いだろうからな。」
そう、単純な力ならウェインはサマリーの上を行く、だがウェインには負ける気がしなかった。
「単純な力だけでは、キャラバンに付いていけないんだよ。」
その事を教えたくて教官役をかって出たのだが、こうも頭に血が昇っているんなら何を言ったって無駄だな。
ウェインは訓練に向いてないのか、成人の儀式が待ちきれないのか、もし、集団行動が取れないヤツならキャラバンに入るのは無理だな。
サマリーは成人の儀式の後の事を考えていた。
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