平原の王

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 朝日が、いつもより早く街を照らした、正確には朝日を反射した暦の石碑が町中を照らす。  ラ・トールの窓  東の山の頂きには巨大な一枚岩が乗っている、そもそも山の頂上に巨大な一枚岩がのっているのも変な話だが。 高さ約200m・横幅15km・奥行き1km  人工的に切り出されたようなその岩は、岩というより壁に近い、ほぼ中央に切り取ったような穴があり、その穴も、何者かが開けたように正確に一直線に開けられている。  夏至の日の朝日だけが、その穴を通過することが出来、他の日よりも一時間ほど日が早い。  切り込みからの陽が一直線に伸びて、町の中央に建つ暦の柱に光を届けると、柱は輝きを放ち、真昼のように明るくなる。  夏至の時期は夜が短い、ほとんどのモンスターが夜行性という事を考えれば、昼が長い夏に成人の儀式を執り行うのは、比較的安全と言える、日が最も長い夏至の日から、日が最も短い冬至の日までは、段々と夜が長くなる。  女神シャナの加護は、今日が一番強いのだ。  ザイルの町は南以外を山脈に囲まれている、不思議な事に、山にはモンスターらしい生物は存在せず、女でも山の幸を取りに行く事が出来た、この地帯全体が女神シャナの贈り物だった。 「これより、成人の儀を執り行う。」  町の南側には、人の世界とモンスターの世界を分ける門があり、交代で見張りを置いている。  この門の人間側に、今日成人する若者が集められていた。  ウェインもその中にいた、ウェイン達若者は、自分に合わせて自分で鍛えた剣を携え、細い革ひもと木の板で作ったサンダルと、麻の繊維で編んだ腰布だけの姿だ。 身体中に赤土と白泥で何かの模様をペインティングしている。  長老達の長い話を聞きながら、ウェインは何処にライオンがいるか分からなかったが、門が開けば真っ先に飛び出すつもりでいた、しかし、儀式の細かい説明を聞くと門を出て直ぐには、ライオンは居ないらしい。  門を出て2kmほど進んだ場所に大河が流れ、その手前にバオバブの樹が並んでいる、そこに、10日前から山羊を繋ぎ餌を与えていたらしい、門の見張りが山羊がいなくなったのを確認すると、また山羊を繋ぎに行く。  こうして、バオバブの周りに比較的腹を満たしたライオンが集められる。  もし、完全に空腹なライオンの群れに遭遇したら、死にもの狂いで攻撃してくるだろう。
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