平原の王

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「ウェイン!お前は俺と一緒だ。」  成人する若者とは違い、付き添いの大人達は白泥だけのペインティングで、全体の指揮を取るサマリーだけは、極楽鳥の羽飾りを身に付ける。  サマリーは一人でライオンを撃退した勇者なので、ウェインの付き添いを一人で行う。 「あんたの手は借りねぇよ」  ウェインの目は血走っていて、まともな判断が出来ないように思えた。 「では開門、女神シャナの光と共に!」 「今宵は宴じゃぞ!」  長老達の声で、門が開く。  こうして、総勢350人の戦士達はバオバブの樹を目指し門を出た。 「お前達は、後から付いてこい」  明らかに力の劣っているものは後方に移動する、訓練中に判断されていて、ウェインはもちろん先頭だった。  ウェインと組むサマリーが全体の先頭となってバオバブの樹を目指す。  他の新成人達は神妙な顔だが、ウェインだけが喜びか狂気か分からない表情だ。  少し小高い丘にさしかかり、いよいよ到着というところでサマリーが足を止める。 「待て、少し話がある。」  そう言って、サマリーは主だった大人達を集める。  ウェインは目の前200mの所にライオンがいるが、また儀式か?程度に思っていた。 「まずいぞ、タテガミが10頭はいる。」 「何?10頭?見間違いじゃないのか?」 「ちょっと確認してみよう。」  ライオンは群れで行動している、ひとつのグループに15~20頭のライオンがいて、その内の一頭がリーダーらしいという事は分かっており、お互いのグループは縄張り意識が強いせいで中が悪いが、餌が豊富にある場合2~3グループ程度なら、一番強いタテガミをリーダーとして同じグループになる事がある、この習性を利用して、成人の儀式用に2~3グループを集めていた。  タテガミが10頭いれば、150頭から200頭のライオンがいることになる、今年の新成人は80人、いつもより少しだけ餌を多くした結果が200頭ものライオンを集める結果になったのか。 「一旦町に戻ろう、もっと人数を集めてるんだ。」 「いや、このまま戦おう。」 「バカな、全滅しかねない数だぞ。」  伝令の為、5人の男が町へ戻る事になった、川から風が吹いており風下に位置するが、この人数だ、ライオンに気付かれるのも時間の問題だろう。  一頭のタテガミが、すぐそこまでやって来ていた。
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