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平原で少しでも傷付く事は、それからの生き残りに大きく関わる、たとえライオンでも手負いで歩き回るのは自殺行為だった。
若いタテガミはその事を知っていた、だからこそ生意気なニンゲンを食い殺さすよりも、これからの生き残りを考え、下がった。
『たかがニンゲンの為に少しでも傷付くのはごめんだね。』
サマリーには、ライオンがそう言っているように聞こえた、だからこそ追いかけようとするウェインを引き留める。
「ウェイン待て、何かおかしい、追うな!」
「何がおかしいだ!絶対俺が勝っていた!親の仇なんだぞ!」
ウェインは逃げ帰るライオンに一瞥し、サマリーを睨み付け叫んだ、もちろん、ウェインにも両親を殺したのはあのライオンではない事くらいは分かっていたが、そう叫ばずにはいられなかった。
「ウェイン違う、あの群れを見ろ!様子がおかしいのが解らないのか?」
叫ぶウェインをなだめるでもなく、ライオンの群れを指さしサマリーも叫ぶ。
「おい、なんだよあれ?」
「ライオンが、陣?」
他の大人達も、あまりにもおかしなライオンの動きに息をのむ。
体の小さなヘイシの群れを中心に、10頭のタテガミが等間隔で円形に並んでいる、いつものライオンじゃない、中心のヘイシの群れを守るように、その陣形?を崩さないように動いている。
「おい!迂闊に近づくなよ!何か企んでるぞ!」
大人達も初めて見るライオンの行動に動揺している、しかし外側のタテガミは威嚇するだけで攻撃をしてこなかった。
円形に布陣するライオンの、こちらから見て反対側にはニンゲンはいない、それでも反対側にいるタテガミは向こう側に向かって威嚇している。
「ウェイン!他に何かいるぞ。」
サマリーは、自分の成人の儀式の時からライオンに対して尊敬の念を抱いていた、あれだけの強さを持ちながら慎重さを失わないライオンに。
「急いで固まれ、大人は外側!ライオンのように固まれ!」
その判断は間違っていなかった、ただ少し遅すぎた、広がった陣形の川に近い所で異変が起きる。
「うわぁ!何だこいつ!」
ギィヤッ、ガッ、ガフゥッ
「食われた!レン達の大人が!」
新成人の後ろに控える大人は、一人に2~3人付いている、全員でかかればタテガミさえも倒せるだろう、その大人達が食われた?
円陣を組んでいたタテガミ達が一斉に集まる。
「何がおきたんだ?」
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