帰国した悪魔

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成田空港からの帰路 リムジンバスの車窓に滴る冬雨越しの景色を眺めながら俺は 久し振りに羽織るロングコートの襟を立てた フィリピンから冬の日本へ帰国すると 俺が日本人で かつては普通にこの冬の寒さの中で過ごして居たのかと疑いたくなる程に寒さを感じる この平和ボケしきった日本って愚かな国家は また一人 悪魔を入国させちまった 俺という悪魔を... 俺が日本人のパスポートを所持しているというだけで こうも簡単に入国させるとは この小さな島国の売りである安全なんて物は 表向きのメディアによって作り出された幻想に過ぎない 入国時 入官の審査はパスポートと顔の確認をするだけ パスポートを出して5秒もかからず言葉を交わす事も無く通過 税関ゲートを通過する時も 飛行機の中で書いた申告書を提出し 税関に申告する物があるか? との問いかけに 無いと答えれば荷物も開けずボディーチェックもせずに素通りの場合が多い 搭乗時に 大きな荷物を預けた場合は ベルトコンベアにより入官と税関の中間で荷物を取り出す事になる この場合はラインを流れて来る途中でX線の様な器械による自動判別装置を潜らせ コンピューターが自動検知した不審物の混入している疑いのある荷物は自動的に別ラインに送られ検査官による荷物の直接検査をされる 機内に持ち込みの手荷物は本人が携帯しているわけだが 通常 搭乗時に検査を通過していれば 到着後に手荷物を検査される事は少ない 挙動不審な小心者は見るからに怪しいからか 手荷物を開けて検査される者もいるが 飛行機に乗る時には どこの国でも荷物やボディーチェックをする 様々な物品の密輸防止やテロリスト対策の為に当たり前の事だが 危機管理能力の薄い日本では 海外から帰国した日本人は現地で検査を通過して来ているものだと思い込んでいるのだろう 俺の手荷物の中に10キロのシャブが入っていようと 5丁の拳銃が入っていようと マシンガンでも手榴弾でも 偽造紙幣でも偽造カードでも どんな物が入っていようが 何事も無く入国出来る 俺の様な犯罪者にとっては ありがたいかぎりだがな
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