帰国した悪魔

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「TT1930 通称 トカレフってやつだ オマエらも名前位は聞いた事があるだろう これはコルト ガバメントをモデルに簡素化したチャカ(拳銃)でな サイズは20センチ以下で重さが900グラム足らず 軽量小型で携帯には便利だし近距離から射撃すりゃ 一撃であの世逝きだ トカレフは貫通力っていうか殺傷能力はかなり高いからな 第二次世界大戦後の東側諸国や中国 北朝鮮なんかで生産 使用されてて 日本でも入手が比較的簡単で値段も安いからヤクザにも出回ってる数が多い ただ トカレフには安全装置が付いてねぇからな 実際にはチャカを扱い慣れてる人間じゃねぇと 持つのは危ねぇんだ」 俺は右手に持ったトカレフの銃口を俊明に向けてカチッとトリガーを引くと 俊明はさらに縮こまった 「心配するな ギョク(弾丸)は入ってねぇよ オマエを殺しても1円にもならねぇからな」 俺が笑いながら話すと 3人も少しは恐怖心から解かれたのか 「龍司さんは本気と冗談の区別が付かなくて マジ ビビりますよ」 秀樹がそう言った横で政和は相づちを打っていると 俊明が 「警視庁の渡辺課長にトカレフ届けるとか マジ龍司さんの冗談には驚きますよ」 と 俊明は安堵の表情を浮かべている 「おいおい俊明 これを明日 オマエが届けるって事は冗談じゃないぜ オマエらが知らないのは無理もないが 結局は俺ら裏社会で生きる人間ってのは 表の世界の人間とも持ちつ持たれつって関係なんだ 渡辺課長には去年面倒を見てもらったっていうか 握ってもらった一件があってな これはその礼って事だ 警察も仕事でな 今月は拳銃取締の月間らしい 拳銃の取締月間に拳銃が挙がればポイント高いから 今月中に欲しいって事だ」 俊明は消え入りそうな声で 「それで.. 自分が拳銃持って警察行って 刑務所に行くって事ですか...だいたい何年位刑務所に入るんですか?」 俺は無表情のまま 「まぁ ギョク無しで持って行けば新品だし 他の事件に使われた拳銃と違って別件逮捕される事も無いだろうからな 初犯なら軽く5・6年もあれば出て来れるだろう」 一瞬の沈黙の後 俺は爆笑した 俊明の衝撃的な落ち込み方を見ながら 「あはははっ オマエ本当に面白いな おいっ秀樹 コイツのビビり顔 写メ撮っとけ写メ」 「馬鹿野郎 懲役になんか行かせねぇから心配するな」 俺はトカレフの指紋を油性布で拭いてから油紙で包んだ
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