嘘と正直

信じない人

「最近見ませんでしたね」

「違う時間に乗ってたから」

「そうなんだ」

「また騙される。そうなんだ、は禁句にしといた方がいい」

疑わないこと自体が気に入らなかったのかもしれない。
嘘も真実も怪我も病気も全部受け入れる。
騙されて騙されて、そして傷ついてまた信じる。
無駄が嫌いだから光莉が嫌いなのかもしれない。

「私、いつも騙されるんです。人を信じて」

「人を見たら泥棒だと思え。俺の持論だ」

「極論ですよ。私はそういうの悲しい」

「ジョン・ノットマン曰わく『極論を恐れて真理には辿り着かない。地動説こそ最大の極論』、だ」

「ごめんなさい、知らないです」

「ジョン・ノットマンは歌手であり、人殺しであり、医者であり、芸術家であり、詩人だ」