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誰にも信頼されず、誰にも記憶されず、誰にもちょっかい出されない人間になりたい。
俺の采配で人を支配し、俺の裏切りで壊滅する。
俺が持つ能力は嘘だ。
「君はまた嘘を吐いた」
「嘘吐きだからな。君は……嘘が嫌いなのか?」
「私には玲美って名前があるの」
「俺の名前に似てなければ呼んださ」
「嘘だけど」
「そう、嘘」
同じ嘘吐きなのは名前が似てるからかもしれない。
彼女、玲美も同じ嘘吐きだった。
女性の嘘、だ。
「真実の愛を叫んで心で笑う人間は嘘を見抜くか」
「光莉だけよ。今の嘘が通用するのは。君は挨拶をするように嘘を吐く」
朝の会話じゃない、と言いかける。
しかし言わない。
それじゃ正直者に見えるじゃないか。
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