信じない人

6/8
前へ
/8ページ
次へ
誰にも信頼されず、誰にも記憶されず、誰にもちょっかい出されない人間になりたい。 俺の采配で人を支配し、俺の裏切りで壊滅する。 俺が持つ能力は嘘だ。 「君はまた嘘を吐いた」 「嘘吐きだからな。君は……嘘が嫌いなのか?」 「私には玲美って名前があるの」 「俺の名前に似てなければ呼んださ」 「嘘だけど」 「そう、嘘」 同じ嘘吐きなのは名前が似てるからかもしれない。 彼女、玲美も同じ嘘吐きだった。 女性の嘘、だ。 「真実の愛を叫んで心で笑う人間は嘘を見抜くか」 「光莉だけよ。今の嘘が通用するのは。君は挨拶をするように嘘を吐く」 朝の会話じゃない、と言いかける。 しかし言わない。 それじゃ正直者に見えるじゃないか。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加