猟奇的事件

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ポーランドを東に果てしなく伸びる道を走る一台の車。 ワルシャワを過ぎ、ひたすらに東を目指す。 最初は対向車線をすれ違う車が幾台か在ったが、もうかれこれ30分は対向車を見なくなった。 これだけベラルーシの国境付近まで来れば、仕方の無い光景でもある。 その東を目指す一台の車を運転するのは一人の女性。 “ポーランド東部は本日は晴天になりますが、夕方からの急な冷え込みの為、濃い霧は発生するでしょう。 お出掛けの際は十分に気を付けて下さい。 続いてのリクエ…” カ-ステレオの天気予報に耳を傾けていると、突然のノイズが走る。 「くっ…。 もう、ボロね!」 彼女は、ノイズを発して聞こえなくなったカーステレオを、まるでいつもの様に当たり前に叩く。 彼女はこの車を気に入っている。 丸いヘッドライトに白いボディ、そして、音があまり良くなくノイズの五月蠅いカーステレオ。 彼女はそのどれもを気に入っていた。
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