51人が本棚に入れています
本棚に追加
何度か叩くと、カーステレオは悪気の無かった様子で軽快な音楽を響かせ始める。
「よしっ!」
彼女はステレオを呆れた様などこか愛おしそうな眼差しで見ると、再び運転に集中する。
この真っ直ぐ伸びた道を走り、彼女が目指す町は、国境のすぐ側にある小さな田舎町、フリグスと言う小さな町だった。
そのすぐ側には、国内で二番目に大きな森がある。
その森に囲まれた町は、農業が盛んで気候や土に恵まれていて、小さいながら豊かな町であった、半年前までは……。
半年前、豊かな町に不可解な事件が起こった。
それが全ての始まりだった。
まず、町の入り口に猫の死体が、まるで見せつけるかの様、ぶら下げてあった。
それだけならただの悪質な悪戯で片付けられる話しだが、その猫の死体には不可解な点があった。
腹を切り裂かれ、臓物が全て地面に撒かれていたのだ。
“悪戯にしては悪質すぎる”
村人達は口ぐちそんな話しを始めた。
村人はこれで不可解な事件は終わりだと、続く訳がないと誰もがそう思っていた。
しかし、深い霧の夜が明けた朝。
人々の悲鳴が町中に響いた。
最初のコメントを投稿しよう!