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特に魔獣討伐の依頼がくれば、ほぼ全ての場合において国が依頼料を全額負担してくれる。条件が整えば、材料収集や指定人物の護衛などの依頼さえもそれは当てはまるらしい。
全ては民が安心して暮らせるように、という今は亡き九代目国王の良き計らいである。
しかし、それ故に金の流れが多く、国庫に負担をかけないようなギルド管理を迅速に、かつ正確にする必要が徹底してあるため、優秀な人材まで多く派遣されるのだ。
説明役をしてくれたコレットはその振る舞いからしても民間からの被雇用者だと思うが、メルシーナさんは確実に国の人間だろう。ギルドの総監督という肩書きを持ちながら、そこらへんで雇われた人間であるはずがない。
まあ、彼女がどう優秀なのか、詳しいことは今俺が知るところではない。
とりあえずは依頼だ。
記念すべき初の依頼を受けてみようと、出入り口から左へ曲がったところにある依頼所へと俺は来ている。
が――、
「これだけ……ですか?」
「おう、それだけだ。嬉しいだろう?国が平和で」
「いや、そういう意味ではなく……」
ガンテツという一風変わった名前を持つ中年の依頼管理人に、俺は不満の声をあげる。
彼の後ろの大きな掲示板。そこにあるいくつかの貼り出しを指差し、
「ほら……そっちの方にある『ルーベルス~イラノア間の護衛を求む!』とか『イクシャンバラの羽根を大袋五枚分!』とか…………そういうのは――」
「おいおい、バカ言うなよ。お前さん新人なんだろ?いくらなんでもランク外だぜ。今受けられんのはこっちにある二枚だけだ」と取り付く島もない様子。
やられた。
優遇されると聞いていたから、てっきりC級あたりまでなら依頼を受けることが可能なのだと思っていた。
どうやらそれは勘違い。つまり普通の駆け出しブレーダー同様、D級E級の簡単な依頼しか受けられないようだ。
くそっ、コレットのやつ……。こういうことなら、さっき来たときに説明してくれればよかったのにっ。
現在不在の出会って間もない少女相手に、俺は心の中でそんな文句を吐き散らした。
うん。
もちろん、完全に八つ当たりである。
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