第一章 旅の始まり、十色の仲間たち

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   そこへ「はあ……」と大きな溜め息が聞こえてくる。もちろん発生元は目の前にいるガンテツさん。 「まあ、気持ちはわからないこともねぇけどよ、ブレイダーってのは商人たちと同じで信頼を築くことが大事なんだ。いいか? お前さんがどれだけ剣や魔法の腕に長けていようが、どれだけ他人から人徳を集めていようが、ここじゃあまず先立つのは"実績"だ。それがなけりゃあ、大切な依頼は任せられねぇ。人の命がかかってるモンもある。わかるだろ?」  イカつい風体からはいまいち想像がつかないが、どうやら面倒見のいい性格らしい。  こんな親が幼い我が子へするように優しく注意をされると、なんだかいたたまれなくなってしまう。 「はい…………わかってますよ。なんというか、その……ちょっと肩すかしを食らっただけです。大丈夫。別に下の依頼をゾンザイに扱うつもりはありませんから」 「ガッハッハ! おう! それでいいんだよ、それで」  そういって、ガンテツさんは豪快な笑いをあげながら、カウンターから身を乗り出して俺の腕を力強くバンバン叩き、 「――で、どっちにするんだ?右か?左か?」と、こちらの意向を再び訊いてきた。  さて。気を取り直し、俺が今受けられる依頼を改めて見てみよう。  右の一つはただのお使い。ポルタという小さな山村へ薬箱を届けて欲しいというものだ。そう急ぐものではないのか、依頼の留置期限はまだまだ先である。  そして、もう片方は簡単な護衛。ウォーラスという少し長い街道を馬車で移動する間、狼から自分と荷を守って欲しいとのこと。指定された日程は明日の早朝。  ふむ……。  俺はしばらく考えた後、今度は堕気を一切捨てて誠実に答えた。 「それじゃあ、右で」 「ほう。本当にこっちでいいのか?」  ガンテツさんが即諾せずに、わざわざ聞き返してくる。どうやら、形式的な確認ではないらしい。  
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