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「はっはっは。このギルド付近では新鮮な海魚が食べられませんからなぁ、それも致し方ないでしょう。遠出を楽しめたようで何よりです」
「アクワスといえば、オニスルメの干物ですかね~。お酒の肴に買ってきてもらえば良かったかしら」
知人の帰還に和やかな出迎えをする二人。
う~ん、新人の俺には何だかアウェーな感じがするなぁ。
そんなことを考えながら、先程もらったサンドイッチにかじりついていると、
「おう兄ちゃん! いいモン食ってるじゃねぇか! 俺もよ、ここのティックサンドは大好物だぜ!」
何だか、ジェイルと呼ばれていた暑苦しいのが食いついてきた。
「なんです、あげませんよ?これは俺がもらったものですから」
「"もらった"だぁ!? 兄ちゃん、まさかおつかい頼まれたのか! ちくしょう! こんなことなら俺もオニスルメ買ってくるんだったぜ!」
どうやらクレアさんはギルドの人間におつかいを頼む癖――もとい、そういったサービスをいつも行っているらしい。要は、ご飯を奢るからおつかいに行ってきてくれ、と。
「よし! クレアちゃん! 俺にもティックサンドを! あとマスター! いつものオレンジジュース!」
切り替えが早い。
先ほど見せた悔恨の表情を消し飛ばすかのように、彼のテンションが一気に上がった。
……っていうか、"いつもの"オレンジジュースって趣向がちょっと子供じみてるな。やたら騒がしいのも含めて。
「あー、マスター。私はグレヌージュの赤ワイン。料理は…………いいや、腹減ってねぇし」
「それじゃあ、僕はチップサラダと黒パンとミルクでお願いします」
「はい。では、少々お待ちください」
ライアンさんが答える。
左手の調理場からは炎が立ち上る。今度は見逃さない。クレアさんは手際よくいくつもの材料を重ね上げ――そして完成。
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