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「はい、どうぞ。ジェイルさん。お熱い内に召し上がれ」
二つの大きな三角形の乗った食器が、赤髪の剣士に手渡された。
「おう! ありがとな!」
そう言って嬉しそうに受け取ると、
「で、兄ちゃんは見ない顔だな。あれか? この時期で考えれば駆け出しの新人なんだろうが」
俺の隣の席に一直線。イスにドンと腰掛けてきて、話を持ち出す。
先ほどまでのとは違い、声量はかなり低めだ。
「当たりです。駆け出しも駆け出し、つい一時間ほど前に来たばかりで、これから初依頼に行くところですよ。もちろん、これを美味しくいただいてからですけど」
パクリとサンドイッチを頬張る俺。
「ほぉ~ん。へもよ~、ふこしわかし早すひるんじゃね~の? まほ~院を出るにしへも、もうひょっと後らったと……」
こちらは現在進行で頬張り中だ。
「彼は特待生なんですよ、ジェイルさん。中央のヴァーリーストン魔導院のね」
ライアンさんは料理を口に含みながら喋るマナーの悪い男を注意することなく、絞りたてのジュースを彼に渡し、補足を加える。
隣ではゴックン! と。
「うぇ~~~っ!? あそこの特待かよ! そりゃあ、早くにギルドへ入れるワケだわ!」
「へっ。誰かさんと違って優秀なわけだな。誰かさんと違って」
そう嘲弄するのは、もはや説明不要だろう。黒づくめのイザベラと呼ばれる人物。
彼女はジェイルさんとは逆――俺から右へ二つずれたカウンター席へと腰を下ろす。
「あぁ~、悪ぃな兄ちゃん。こいつは頭ん中にマスタードが詰まってるからよ、こういうキツいことばっか言ってくるから。まあ、気にせず食おうぜ!」
「マジで死ねよ、ハゲ。てめぇみてぇな単細胞プリンに言われたかねー」
なんだろう。この二人の間に挟まるのは危ない気がする、いろいろと。だからといって、今更席を変えるのは何だか失礼な気もするし……。
――が、そこへ救世主が現れる。
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