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「ほら、イザベラ。新人さんが困ってるよ?今日は少し抑えないと」
俺と毒女との間に割って座る青年の言葉に、
「……ちっ、わかったよ。今日はもう酒飲んで寝る」
仲間にちょっと注意されただけで、やけに極端な考えに行き着くものだ。まあ、長旅で疲れているのかもしれないな。
そんなことを考えながら、俺は仲裁に入ってくれた青年に感謝を述べる。
「どうも、すみません。気を遣わせてしまったみたいで……」
「いやいや。こちらこそ、せっかくの食事中にお邪魔してごめんね」と右手を差し出して、
「僕はロゥアス・マーソン。両脇にいる二人とは二年前からの付き合いでね、その頃は僕らも駆け出しで、いろいろと大変な思いをしたものさ。君も何か困ったことがあったら、周りの人を頼るといいよ。――もちろん、僕たちでもね」
何……? この人。
先の二人を見た後だと、まともどころか礼儀正しすぎて聖人君子に見えてくるんですけど。……別に、二人の性格が嫌いだと言いたいわけじゃなく。
「はい、俺はオルト・エト。これからはよろしくお願いします」
「うぇ~……ほら見ろイザベラ。お前が余計な横槍突っ込むから、ローに言いたいこと全部言われちまったじゃねぇか」
俺が快く青年の手を握り返していると、横で剣士がグラスを片手に不満を漏らす。
もう一人の方は「うぜぇ」と一言だけ罵ると、ライアンさんからもらったワインを一口含み、眉間に手を当てうなだれてしまった。
今度は出会ったばかりの俺でも確信が持てる。やはり、ひどく疲れが溜まっているらしい。
「おう! そういえば兄ちゃ――オルトはさっき、初めての依頼を受けたって言ってたな。よかったらどんななのか、依頼書見せてくれよ」
沈鬱とした連れをよそに、こちらの男は止まることなく活力をみなぎらせている。
まさか依頼を横取りするような悪どい人間には到底見えないので、俺はなんの警戒もせずに依頼書の複写を渡し見せた。そもそも、そんな不届き者がブレイダーズギルドにいるとも思えない。
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