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「ふむ、なになに? アイシスに住んでいる医師の方が、薬箱をポルタの村まで届けて欲しいそうです~……か。なるほど、単純なおつかいタイプの依頼だな。まあ、無難ではあるかねぇ。退屈かもしんねぇけど」
「こらこら。これからその依頼へ向かう人を前に、そんなこと言ってどうするのさ。晴れた心で出発できるよう見送ってあげないと……」
本当に気遣いのできる人だな、別に先の発言を気にしてもないんだけど。
「ふーん。アイシスっていやぁ、紅茶……あとハーブが有名だな。今回のおつかいはソレか。…………ああ、くそっ。なんかすっきりしねぇ……。クレアさん、茶。アイシスのハーブティー」
ワインを飲み干しても苛立ちが取れない毒女。そんな言葉足らずな注文に、心配そうに尋ねかけるのはクレアさんだ。
「その……大丈夫ですか? イザベラさん。お疲れなら上で休まれた方が……」
「大丈夫ですよ。ちょっと"重い"だけで、別に調子が悪いわけじゃあ……。はぁ…………メンドくせぇ……。くそ……」
再び眉間を押さえ込む彼女だが、よく見れば奥の右手で下腹部をさすっていた。
「あらあら。それは大変ですね……」とクレアさんは若干恥ずかしそうな顔を浮かべる。
ああ、なるほど。"あの日"なのか。
魔導院生時代、友人の女性も荒れる日が何度もあったが、それを見ていたらよくわかる。女というのは本当に不便だな。体調が変わりやすければ、ギルドの仕事にもかなりの支障が出るだろうに。
「さてどうぞ、ローさん。先ほど注文されたメニューです」
疼痛に苦しむイザベラさんとやらの件を一旦保留にし、クレアさんは運んできた銀のトレイ上から手軽なランチセットを取り置いていく。
ロゥアスさんは丁寧に会釈をして、
「どうも。いつもお世話になりますね」
「いえいえ、これがお仕事ですから。毎日楽しくやらせてもらっています。――それとオルトさん、これを」
そう言って彼女が俺の前に置くのはグラスに注がれたミルク。
何です、これ?
「初回サービスです。さすがにティックサンドだけでは、口の中が渇いてしまうでしょう。それとも、ミルクはお嫌いでした?」
「いえいえ、そんなことはないです。…………ただ、その……本当にいいんですか? こんなにも振る舞ってもらっちゃって……」
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