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そう言われて、俺は肩に掛けた安っぽい布袋から、細く丸められた羊皮紙を取り出した。止め紐を解くと、先ほどまで筒状に丸められていたのが嘘だったかのように、きれいな平面ができあがる。
形状記憶魔法――
簡易ではあるが、そんな魔法が付加された上等品である証だ。
「どうぞ。身分証です」
彼女は文面に軽く目を通した後、紙の右下に描かれた魔法陣へと手をかざす。
すると、その手が淡く光り、紙からも空色の魔法陣が浮かび上がった。
「はい、確認しました。正真正銘、ヴァリーストン魔導院出身のオルト・エトさんですね。認証魔法陣(メモリーサークル)も現在この王国で使用されているものに間違いありません」
そして、読み終えた証書を慣れた手つきで丸めながら、
「それでは、正式なギルド団員の証として団章を配付します。バッジかブレスレットか、どうぞお好きなタイプを選んで下さい」
「バッジ」
俺は即答する。
どっちにしろ、四六時中身につける必要がないものだ。必要時以外でどこかにしまっておくのであれば、簡素な形をしたもので充分。デザインなんて気にしない。
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