序章

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  「わかりました。今、係の者に持って来させますので」と快諾して、 「一応説明しておきますが、団章自体には大した効力がありません。あくまでも団章は証ではなく印――、つまり、ギルド団員として他者への顕示にはなっても証明にはならない、ということですね。ギルドに所属しているという証が必要なときは、付属の団員証書を相手に見せてください。むしろこちらが本命です。……とはいえ、団章は一般の方々からすれば充分に信用足り得るものになってしまいますので、紛失した場合には相応の罰金を取らせてもらいます。下手をすれば、犯罪に利用されてしまうこともありますから。もちろん、団員証書の紛失などは論外――なるべくなら普段は万が一にもそうならないよう、自分の『領域』(テリトリー)で大切に保管しておいてください」  長々しい事務的な説明を終え彼女は俺に身分証を返すと、手元にある青い凸レンズの形状をした水晶体に軽く指を当てる。  すると、またもや浮き出てきたのは光り輝く魔法陣。ただし、描かれている先のは程とまったく異なる模様だ。 「コレット。例の新人さんが見えたから、バッジの団章と団員証書を持ってきてくれる? 後、先に頼んでおいた通り、ギルドの案内を彼にお願いね」  メルシーナさんの言葉に対し、魔法陣から返ってくるのは明朗な少女の声。 《はい、了解です! 今すぐそちらに向かいますね》  
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