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「どこの……って、オカシラってばボケちゃった?」
「オカシラのトコのマスコットガールズ、リズ&シズを忘れちゃったのぉ~!?」
「ちっげーよっ! いきなり何しでかしてんだ、テメェらは! ウチは人の売買は御法度、バガンのアホとは違ぇんだよっ! 分かるかっ? このアホアホツインズ一号二号っ!!」
抑え付けられている為、その靴の爪先しか見えないが、声からしてそうわたしと年の離れていない男なのだろう。声に張りはなく、どこまでもだるそうなものであったけれど、若々しさだけは感じられた。
「ったく、相変わらずテメェらは、二人一緒に出歩くとロクな真似をしねぇな」
しかしその双子との掛け合いにも似たやり取りには、どこかしら暖かい親しみのようなものが感じられて、思わず首を傾げそうになった。
まぁ、首を傾げたくても、肩先からガッチリと抑えられていて、無駄にほっぺたを地面の汚れにまみれさせただけに終わったのだけれど。
ともあれ、『オカシラ』と呼ばれていた割には、この男には偉ぶったところが感じられない点に違和感を覚えたのだ。
そんな彼は、内心で首を傾げているわたしに、ペタンペタンと気怠げな歩調でゆっくりと近づいてくると、『んっこらしょ』と気の抜けた声と共に、わたしを抑え付けていた二つの重みを取り払ってくれる。
「てへっ、軽い冗談なのにぃ~」
軽い冗談で人を組み敷いて、人身売買の相談をしないで欲しい。
もちろんそんな事は口に出しては言えないけど。
「あ、オカシラ、一号はシズだよね? リズが一号とかだったらストライキモンだからねっ!?」
アホアホツインズなのは否定しないのか。
これも地雷だろうから、喉元まで出掛かったツッコミは飲み込んだけど。
二人揃って小柄な栗色と灰色の髪を持つツインズは、軽く男の腕にぶら下げられながらもツッコミ所が満載な事を喚きつつ、ケラケラと笑いを漏らしていた。
冗談で組み敷かれて、服が埃にまみれてしまったわたしなんか、これっぽっちも気にしていないらしい。
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