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「ったく、本気でジョークのつもりなら、テメェらには致命的にジョークのセンスが欠けてんだよ」
なんとかかんとか服の汚れを払って警戒しながら立ち上がると、目の前で双子の襟首を掴んでいた男は深々と溜め息を漏らしていた。
声からの印象通りそう年代は変わらないようだ。十代後半から、もしいっていても二十代の半ばといったところだろう。
そのどこまでも深い色をした黒髪と、色素の薄い感じを受けるブラウンの瞳は、そこはかとなくアンバランスな印象を受ける。
容貌としてはかなり整ったルックスなのだろうけれど、芸術的なまでに跳ね上がった寝癖と、『さっきまで寝てました』と言わんばかりの顔に刻みつけられたシーツの痕が非常にだらしない。
「あの……」
「あんた、どっかそれなりにいいとこのお嬢さんだろ」
一応三人の顔を記憶に刻み込み、なんとか声をかけようとしたわたしの言葉を遮るように、『オカシラ』さんは声を被せてきた。
その声もやはり気だるげで、だらしない姿を視界に収めた後だからか、ものすごく眠そうな声に聞こえる。
「あんたみたいな着飾ったお嬢さんは、この辺りをうろつかない方がいいぜ? 攫われて、薬で飼い慣らされて、どっかの変態親父に売り飛ばされたいってんなら……まぁ止めてやる義理もねぇんだけど」
「違いますっ!」
思わず声を荒げてしまうのも仕方がないだろう。わたしって、そんな歪んだ願望を持っているように見えるのだろうか。
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