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カチ
芯を出して、再度ペンを持たせた。
カリカリカリ
目はどこか一点を見つめながら、紙にゆっくり書いていた。
「…きたね。」
ミミズが、紙の上で泳いでいる。
「あい…む?」
紙に「あいむ」と書かれていた。
「お前あいむって言うのか。」
「…。」
少女が始めて頷いた。
「あいむは家族いるのか?」
「…。」
首を横に振った。
「警察になんて絶対にいけないし…。下手に放置しても…。」
もう見かけからして、ホームレスか、家出少女のどっちかだ。
盲目の少女を放置してしまったら、悪い奴がこいつを利用するかもしれない。
しかもこんな季節。
凍死もありえる。
そうなるともう答えは一つだ。
「親か誰かが見つかるまでここにいていいから、大人しくするんだぞ。」
「…。」
静かに頷いた。
■■■
「ってわけなんだよ。」
「へえ。漫画みたいな話だね。」
弥一の隣で、キーを打つ男がいた。
カチカチカチカチ
すさまじい早さだ。
「聖吉はどうすべきだと思う?」
「なにが?」
「その女だよ。今後どうすればいいと思う?」
「風俗に売り飛ばして金儲け。」
「お前なら言うと思った。」
「他に何があるんだよ。それか、性奴隷にでもしちゃえば?」
茶髪のメガネが無表情でそう言った。
「お前に相談した俺が馬鹿だったよ。」
「弥一は考えが甘いよ。」
カチ
「やっと終わった…。」
聖吉が体を伸ばした。
「うっせ。別に危害加えなくてもいいじゃねーかよ。
」
「弥一はさ、何ていうか慈悲深いよね。」
「…ふん。」
「この間も一緒に歩いてた時、捨てられた子猫をじっと見てたよね。」
「…。」
「俺は踏み潰したいとは思ったけどね。」
笑顔でそう答えた。
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