佐川さん家の美人妻

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顔を上げると、美人な女の人がいた。 「夫の借金はちゃんと払いますので、息子には手を出さないでください。」 「…わかった。あと、このガキちゃんとしつけておけ。」 「はい。すいませんでした…。」 「…。」 弥一はそのまま振り返って 道を戻っていった。 「…美人だったな…。」 頭にはそれしか残っていなかった。 「カツアゲでもして帰るか。」 弥一はまた、街にくりだした。 ……… ガチャ 「ただいま。」 「あ、お帰り。あいむちゃんが帰って来たよ。」 真智留が手招きしていた。 「マジで?」 足早に、社長の席のほうに走った。 「あいむ!」 そう呼ぶと、奥にいる髪の長い女の子が振り向いた。 「おお。」 思わず声が出た。 「服が変わるだけでこんなに変わるもんかね。」 真智留があいむの頭を撫でていた。 「そりゃあね。私のファッションセンスをなめたらいけないわ。」 社長は、いつも高くしている鼻をもっと高くしていた。 「…。」 あいむは両手を胸の辺りまで上げ、何かを探していた。 ガサガサ 「どうした?」 弥一がそう聞いた時だった。 「…。」 あいむは、その声を頼りにまっすぐ進んでいった。 「あいむ。」 また呼びかけた。 「…。」 どうやら一生懸命弥一を探しているみたいだった。 ぺた ついに、中指が弥一の服に触れた。 ギュ そのまま、あいむが抱きついた。 「わ…。」 真智留がにやけながら声を出す。 「お前…どうした?」 少し慌てながらあいむの肩を掴んだ。 一向に離れる気配がない。 「おいっ真智留!にやけてんじゃねーぞ!」 「俺で照れ隠ししないでよねー。」 「うるせえ!!」   「とにかく、ここでイチャつかないでくれる?向こう行って。」 「あいむ。席に戻るぞ。」 「…。」 ようやく離れた。 ガチャ 「安保さんの席に座りな。」 「はい。」 真智留が椅子を出してあげた。
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