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「んなのはわかってる。」
「あいむちゃん。どうして抱きついたの?」
真智留が急に話題を変えた。
「…。」
「空気読めねーなお前…。」
弥一が呆れていた。
「え?なに?」
真智留があいむに聞き返した。
「なんか喋ったのか?」
「いや、口をパクパクさせてるからさ。」
「…。」
2人はあいむに注目した。
「か?…ん…しゃ…?」
弥一がそう読み取ると、あいむが頷いた。
「ああ、感謝な。」
「欧米スタイルだね!」
「あ?」
「ハグ。」
「…あいむ。何か不便があったら何でも言えよ。」
「…。」
無表情で頷いた。
■■■
午後
あいむはまだ椅子に座っていた。
「…。」
ガタ
聖吉が立ち上がった。
チラッと時計を見ると13時。
財布を片手に、ドアに向かって行った。
スタ…スタ…
入り口の近くの席に、1人座る少女。
真っ正面を向き、手は太ももに置いて大人しく座っている。
「…。」
弥一も変な物を拾ってきたものだ。
目の見えない少女が、どうしようもない兄ちゃんに話しかけるなんて明らかに怪しい。
まあ、巻き込まれるのはアイツだ。
俺には関係ない。
「…。」
ガチャ
聖吉はあいむに話しかけることもなく、すぐに部屋を出て行ってしまった。
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