口の巧みな男

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「でも閉めたら、みんなが寒いでしょ。」 「…なら我慢しろ。」 ガタ 弥一が立ち上がった。 「銀行か?」 「300万徴収しに行ってくる。」 「逆にカモられないように気をつけて。」 「ああ。」 最近、騙した相手に騙し返されるという事が起きた。 なんでも、詐欺と疑ったカモが警察を呼んで、ぬけぬけとやってきた俺達を捕まえるって事らしい。 「俺も狩られないようにしないと…。」 銀行に入る前に、警戒しておかなければ…。 ついこの間も県境の詐欺集団がこの方法でブタ箱に入れられた。 「まだ入りたくねえな…。」 まだまだ稼ぎ足りない。 なんせ20前半の若い男。 ブタ箱で三十路になるのは勘弁。 ちなみに一回少年院に入った事はあった。 男臭くてやっていられなかったな。 幸いすぐ出れたから良かったが、その日で高校辞めちまった。 「…あった。」 徒歩20分 銀行を見つけた。 キョロキョロと辺りを見渡す。 「…。」 大丈夫か? まあ、受話器の向こうのババア、アホそうだったから大丈夫だな。 「よし。」 ウィィン 自動ドアが開いた。
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