口の巧みな男

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バタバタ… 「!」 今まで無表情だった彼女が、騒々しい足音に反応した。 「いたか?」 「いや、いない。一体どこへ行っちゃったんだ…。」 白衣を着た男が2人。バタバタとすぐ近くでコンクリートを叩く。 「…。」 少女は胸を押さえた。 「間違って川に落ちちゃった…とかないですよね?」 一番若い白衣の男が、寒空に震えながら言った。 「そんな、院長にまた怒られる!」 「…事故死と見せかけて殺しちゃいませんか?」 若い白衣の男が、恐ろしい提案をした。 「…そうだな。もうアイツの世話をしなくて良くなるもんな。」 先輩白衣もその提案に乗ってしまった。 「捜せ!!見つけ次第殺す!!」 「了解です!」 バタバタバタバタ… 白衣の男たちが逆方向に走って行った。 「…。」 少女は耳を研ぎ澄ませた。 もうあの2人はいない。 騒々しいあの足音が無くなって、辺りは物静かだった。 ぺた 「…。」 ぺた ぺた そして、また無表情で歩き始めた。
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