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「だぁてめぇ!?ぶつかっといて黙って帰れっと思ってんのかぁぁぁあ!?」
雲が暗い寒空の下、弥一はカツアゲに勤しんでいた。
「す、すいません!急いでいたものですから…。」
「うわ?!肩がいてーわ!!折れちまったか!これは2本いっちまったかもなぁぁ!!」
ワザとらしく、オーバーに。眉と口をひたすら動かして金を巻き上げていた。
「す、すいません!!1万でいいですか?」
相手は胸倉を掴まれていて、半泣き状態だった。
「1万だぁ?」
「すいません…。」
「見たところ、お前医者か?白衣なんか来て何してんだよ?」
「人さが…あ、いえ、まだ研修医でして…。」
「研修医のくせにもう堂々と白衣着てんのか!!?許せねー!金出せ!!」
「その理屈はどうかと…。」
「うるせえ!!一滴も血を出したくなかったらとっとと金出せっつてんだ!!」
「わ、わかりました…。」
白衣の男はそう言って、財布を取り出した。
「かせ。」
バッ!
「あ…。」
ガサガサ
「結構持ってんじゃねーか。」
「…。」
「お前、今日いくら使う?」
突然白衣の男にそう尋ねた。
「えっと…7,000くらいですか?」
「じゃあ、1万だけ残しとくからな。」
1万円札を6枚取って、財布を返した。
「じゃあな。金、サンキュー。」
そう言って、弥一は消えていった。
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