口の巧みな男

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■■■ 「だぁてめぇ!?ぶつかっといて黙って帰れっと思ってんのかぁぁぁあ!?」 雲が暗い寒空の下、弥一はカツアゲに勤しんでいた。 「す、すいません!急いでいたものですから…。」 「うわ?!肩がいてーわ!!折れちまったか!これは2本いっちまったかもなぁぁ!!」 ワザとらしく、オーバーに。眉と口をひたすら動かして金を巻き上げていた。 「す、すいません!!1万でいいですか?」 相手は胸倉を掴まれていて、半泣き状態だった。 「1万だぁ?」 「すいません…。」 「見たところ、お前医者か?白衣なんか来て何してんだよ?」 「人さが…あ、いえ、まだ研修医でして…。」 「研修医のくせにもう堂々と白衣着てんのか!!?許せねー!金出せ!!」 「その理屈はどうかと…。」 「うるせえ!!一滴も血を出したくなかったらとっとと金出せっつてんだ!!」 「わ、わかりました…。」 白衣の男はそう言って、財布を取り出した。 「かせ。」 バッ! 「あ…。」 ガサガサ 「結構持ってんじゃねーか。」 「…。」 「お前、今日いくら使う?」 突然白衣の男にそう尋ねた。 「えっと…7,000くらいですか?」 「じゃあ、1万だけ残しとくからな。」 1万円札を6枚取って、財布を返した。 「じゃあな。金、サンキュー。」 そう言って、弥一は消えていった。
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