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フェルト一行が去った後、
残ったのは破壊されたワインの貯蔵庫とアルケイン。
ワインの樽も半数はやられてしまったらしく、辺りに無惨な紫色の池を作っていた。
そんな中、焦げた人が1人…。
「な、なんですかね…この虚しい感じは…。試合に勝って勝負に負けたっていうんでしょうか、こういうの。」
といっても返事をする相手はおらず、ピューと冷たい風が吹き抜けるだけ。
「ハハ…なんか笑えますね。」
ぽっかりと心に穴があいたてしまったようでどうしようもない。涙は出ないけれど、泣いているような気分だった。
そんな時だった。
遠くから誰がの声が聞こえてきた。名前を呼ばれたような気がして後ろを振り返る。
「アルケイン様――っ。」
「…?」
自分の名前を呼びながら近づいてくるのは妙な3人組だった。
3人はそれぞれなべ、おたま、まな板をカンカンと打ち鳴らしながら走ってくる。
正直あまり関わりたくないアルケインなのだったが、こちらに向かってくるのだから仕方がない。
「アルケイン様、ご無事ですか??」
息をきらしながら、知らないなべは言った。
「………どちら様ですか?」
「「「…ええっ???」」」
明らかにアルケインの目は焦点があっていない。
3人は一瞬の間があいたが、傷ついた表情で叫んだ。
だが、残念ながらなべ頭とおたまとまな板の知り合いはいないと言いたいアルケインなのだった。
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