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―場所は変わり、アルケインの敷地内にあるワイン貯蔵庫。
「フン、随分溜め込まれていたもんだな。」
そこには肩に小さな動物をのせた赤毛の少女がいた。
少女は、積み上げられたワイン樽の山を見上げていた。
「早く運び出せー!」
まわりでは、その少女の指示のもと、多くの兵士達が酒樽を運び出していた。
「それにしても…これは相当な酒好きだな。昔、酒を水のように飲む奴がいたが……フン、酒なんぞ上手くもなんともないのにな。」
その少女は明らかに未成年だった。
しかし、飲んだことがある風な口振りで不満を吐き出した。
「ま、酒なんて俺には関係ないしな。早目にすませるか。」
少女は黒光りする杖を取り出すと、呪文を唱え出した。
「フェルト様…?一体何を……。」
作業をしていた兵士達は、手を止めざわつき出す。
「いちいち運び出してたら日が暮れる。さっさと破壊してしまえばいいだろう。」
「そ、それでは、ギアマンテ様のご命令と違ってしま…。」
「うるさい、一緒に消すぞ。」
「は、離れろ!巻き込まれるぞー!」
兵士達の顔が一斉に青ざめる。
中にいた兵士達も我先にと貯蔵庫から離れていった。
「それでいい。」
そのフェルトと呼ばれた少女はニィと唇を寄せた。
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