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「消えろ!」
カッと杖が黒い光を帯びる。
次の瞬間に発せられたのは、巨大な黒炎の塊だった。
放出されたエネルギーは膨大で、この短時間に詠唱したものとは思えない。
あんな倉など簡単に焼き付くしてしまうだろう。
そう思われた時だった。
「コラァァアアッッ!僕の可愛いワイン達に何をって………アッッッツツツウゥ!!」
「………………は?」
そこにいる全員が揃ってぽかんと口を開けた。
それもそのはずだ。
突然、奇声(?)をあげながら、しかも怪しい仮面の男が自ら炎の中に飛び込んできたのだから。
男はプスプスと黒煙をあげながら、ぐったりと地面に倒れた。
「…死んだか?」
「死んでないですよ!」
男はガバッと勢いよく飛び起きた。死んではいなかったようだ。
「いきなり何するんですか!見ず知らずの幼女に魔術でぶっ飛ばされる憶えなんて微塵もないですよ!」
男は頬を膨らませた。
しかも、男には黒くなったという以外、これといった外傷は見られない。
「ヘンタイか…?この術で死なないとはな。ん?お前どこかで…。」
フェルトはこんがり焼けた男の顔をマジマジと見つめた。
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