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ガキンッ!!
「フン。」
フェルトは肩に当たるスレスレのところで、杖の柄で刃を受け止める。
ギリギリと音を鳴らし、両者の攻防が続く。
しかし、強いとはいえ男と女。
まして、大人と子供。
明らかに少女の不利である。
「ダイコク!」
少女は顔をしかめながら、そう叫んだ。
すると、それまで肩にしがみついていた小さな獣の目が紅く光る。
カッと目を見開かれた瞬間、ダイコクと呼ばれた獣はアルケインに強靭な牙を向いていた。
「うわっ!」
刃を受け止められていたアルケインとの距離は、1mもない。
そうすぐにはかわせるはずもないのだ。
「うぐ……っ!」
アルケインは顔をひきつらせながら、鼻先1センチのところでギリギリ牙をかわした。
「…避けたか。」
悔しそうに舌打ちする少女に、獣はキュウと鳴いて尻尾を丸めた。
「は、鼻がなくなるかと思いましたよ……って…ダイコク??」
「ああ?これは、俺の使い魔のミニダイコクだ。」
ミニダイコクはキャウと元気よく鳴いてみせた。
「ミニ?…昔もっとあのビッグサイズを見たことがあるような……あれ??………ああっ!!」
「何をゴチャゴチャ言ってるんだ。次は外さんぞ。」
少女はいらついた様子で再び杖に魔力を注ぎ込む。
「わーーー!ちょっと待ったぁ!」
「…命乞いか?」
「貴女、フェルトさんでしょ!?」
「あ?」
さっさと魔術を打とうとしていた少女は、アルケインの言葉に手を止めた。
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