影の捕囚

始まりの日

　目を開くと、カーテンの間から零れた光が佐伯一馬の目を射抜いた。
一馬は少し伸びをするとベッドから降りて制服に着替え、自分の部屋を出て行った。
階段を降りてリビングに入ったが人の気配が全くしない事に気付く。

「あれ？母さんは居ないのか？」

そう呟き周りを見渡すと机の上にメモ用紙らしきものが置いてあるのが目に付いた。
手を伸ばしてそれをとると、やはりメモ用紙だった。
それに目を走らせる。

「なるほど・・・親父の所に行ったのか。」

一馬の父親は二週間前から出張で家に居なかった。あと二カ月ほどは帰ってこないのだが母親は父親が心配でどうやら様子を見に行ったらしい。