第1話 始まり

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あまりの展開の早さにおもいっきり置いてきぼりを食らう俺だったが、どうもそんなことを考えている暇はないらしい。 俺の視線を捉えて離さないその怪物は、爛々とした黄色い目をこちらに向けた。 「――――っ!!」 俺はハッと我に返り、急いでその場から逃げ出そうとした。しかし、それは叶わなかった。 「グオオォォォォオォォォオオォオォオオオォオォォオオオォオォォオオオォ!!」 平凡な公園に響き渡る野獣の咆哮。明らかに不釣り合いで非現実的なその咆哮に、俺はたちまち動けなくなってしまったのだ。 動いたらこっちにくる。そんな恐怖が頭に染み付いて離れなかった。 「大丈夫ですよ」 ふと、隣から冷静でありながら楽しんでいるようにも聞こえる声が俺の耳に届いた。 転校生の篠原だ。俺が呆然と見守る中、篠原は更に言葉を続けた。 「安心してください。貴方を死なせたりなんかしませんから」
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