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死ぬ可能性大だろ!
などとツッコミを入れる余裕など俺にあるはずもなく、ただただその場を動けずにいた。篠原も前方を見据えたままぴくりとも動かない。
動きを見せたのは、翼の生えた虎だった。力強く地面を蹴ったかと思うと、こちらに向かって大きく飛び掛かってきたのだ。
場所は公園。
大した広さなどなく、俺が気付いたときにはすぐ目の前まで大きな虎が襲い掛かってきていた。
動けない、声すらでやしない。そんな自分を呪いながらも、情けないことに俺は目をつぶってしまった――――。
…………あれ?
何も起こらない。
再びまぶたをあけたとき、まず目に飛び込んできたのは篠原の背中だった。
恐怖により外界をシャットアウトしていた俺だったが、少しずつ状況が把握できてきた。
前からは獣の荒い息遣いが聞こえ、辺りは砂塵が巻き起こっている。
「大丈夫ですか?」
背中を向けたまま、篠原が声をかけてきた。
その表情がどんなものなのかは俺には知るすべなどないが、どうやら篠原に救われたということだけは確からしい。
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