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僅かに篠原が圧されているように見えた。
この公園には不釣り合いな金属音が響く中、俺は呆けた様に立ち尽くしていた。逃げたくても俺には篠原を一人置いて公園から立ち去る勇気は無かったし、かといって助ける勇気もあるはずが無かった。
虎の攻撃によるものなのか、篠原の手から突如剣が離れ、近くの砂場に突き刺さった。
離れていく剣を見る篠原の顔が、一瞬にして焦燥の色に変わるのが分かった。
虎が吠える。
剣を失い、再び虎を睨み付ける篠原。
篠原を見返す虎が、ニヤリと笑った気がした。
その時、篠原と目があった。
――――気付けば俺は篠原のもとへ、猛狂う虎のもとへ駆け出していた。
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