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『ハルトさんは“触って”ください!!』
なすすべもなく棒のように立ったまま、俺の頭の中では篠原に言われた言葉が何度も繰り返されていた。
触る?そこら辺の滑り台よりでかいあの虎に?
意味がわからない。
俺が触ったところで虎が倒れるわけでもあるまいし。
それに怖くてできそうもない。立っているのがやっとなのだ。
我ながら情けないが篠原とは差がありすぎるんだ、きっと。
篠原が虎越しの位置に移動し、俺からは完全に虎の背しか見えなくなった。
俺と虎の距離、僅か3メートル。
今すぐにでもこの場を離れたい。
「ハルトさん!貴方ならできます、僕を信じてください!!」
――――でも、それでもやっぱり、俺は篠原をおいてなんかいけないみたいだ。
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