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篠原の顔はここからじゃ見ることはできない。
でも、笑っているはずだ。
まだ出会ってから一時間もしていないはずなのに、俺には篠原がどんな顔をしているのかわかっていた。
もしかしたら笑っていないのかもしれない。俺にだって笑う余裕などなかったのだから。
でも俺の中の篠原は、紳士みたいにニコニコ笑っているんだ。
俺は声も出さずに地面を蹴り、虎へと走りだした。
3メートルという距離なんて一瞬にしか感じないはずなのに、その間にも自分の心臓が今にも暴れだしそうなくらい鼓動してどうにかなりそうだ。
顔が、身体が熱い。
“触って”ください!!
俺はとっさに、右手を前へと突き出した。
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