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ここで怪物がどうのこうのと言っても、恵里姉を混乱させるだけだろう。
十分俺も混乱はしているが。
「まったく気をつけなさいよね……心配したんだから」
そういって恵里姉は立ち上がると、学校はもう休んじゃいなさいと言い捨てて部屋を出ていった。
急に真剣な顔になったり適当な事を言ったり忙しない姉である。
「んじゃ、説明してもらおーか。一から十まで分かりやすくな」
俺は恵里姉が階段を降り切った音を確認してすぐ、篠原をもう一度睨んだ。
相変わらず笑っている篠原は、焦らないで下さいとでも言いたげに、落ち着いた口調で話し始めた。
「突然ですが、ほとんどの人には“チカラ”が宿っています。一つしか持っていない人もいれば、二つ以上持つ人もいます。普段“チカラ”は人の奥底に眠っているためそれに気付くことはないのですが、ある研究者が開発した薬を飲めば“チカラ”を使う事ができるようになります」
篠原がペラペラと話しだす。俺はただじっと聞き漏らさないようにし、話の腰を折るようなこともしない。
正直ツッコミたい箇所がいくつかあるが、篠原の話を最後まで聞いておくことにしたのだ。
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