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僕はため息をついた。
ジンがこんな顔で何か言う時は、もう奴の中では決定事項なのだ。
「仕方ないね。途中で投げ出したり、ましてやあの子を捨てようなんて思ったら…二度と友達とは思わないからね」
「ああ。勿論」
「ノワール家が何かしら言ってくるかもよ?」
噂が伝わるのは早い。
ユーリの見た目もいずれノワール家に伝わるだろう。
「ノワール家にも話のわかる奴がいるから、そいつを通して手を出さないように言っておく。自分から諍いを起こしたいわけじゃない」
話のわかるヤツ…って、あの人か。
「ディーンさんか。あの人今何処にいるのか知ってるの?」
僕が面識の有る唯一の闇属性持ち。
ただ、大貴族の中でも変り者であちこち気ままにフラフラしている。
そのくせここぞという時にはいるんだよねえ。
「昨日帰ってきて今は本家にいると連絡が有った」
「は?聞いてないんだけど…?」
「今朝言おうとしたら、お前が薬草採ってこいと俺をギルドから追い出したんだよ」
ほんとにここぞという時にはいるなあの人。
――僕達は話に夢中になりすぎていた。
ふと、ユーリの方を見てみると。
そこには、空のカップだけが残っていた。
チェスターSide End
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