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苔蒸した岩に寄り掛かるように、目を閉じてすやすや眠っている小さな子供。
夜の闇よりも深い黒髪、滑らかそうな白い肌、時折柔らかそうな桃色の唇を何か言いたげに震わせている。
これは、なんだ?
ただの人間の子供。
そうわかっているはずなのに、私の体はそれだけではないと訴えかけていた。
コレは、ただの人間の子供ではない。
もっと、もっと大切な、かけがえのない…
そこまで考えて、はっとした。
何を馬鹿な事を考えている。
コレは、人間だ。
私の父や母、友を自らの欲の為に殺し奪いさった、愚かな人間の子供。
やつらがそうした様に、私もこの小さな子供を引き裂いてしまおうか?
そっと、前脚をその小さな顔に近付けてみる。
「ふにゅぅ…」
白い頬に触れる寸前、子供が身じろぎしたので慌てて前脚を引っ込めた。
良かった、起こさなかった…
いや、だから何故私がこんな子供に気を遣う必要がある!?
何なのだ、この不可解な感情は…
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