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今度はさらに慎重に鼻を近付けてみる。
ふにゃり。
柔らかい頬に触れた。
…良い匂いがする。
今まで嗅いだどんな匂いとも違う、甘い匂いだった。
ふんふんと匂いを嗅いでいるとまた子供がモゴモゴ動く。
ピタリとこちらが動きを止めるとまたスヤスヤおとなしくなった。
私は一体何をしているんだ?
目の前の無抵抗の子供を害する事など出来ず。
さりとて、そのまま放り出していく事も出来ず。
「…」
仕方なく、丁度森に侵入してきた人間を子供の前まで連れてきた。
私が目の前に現われても攻撃してこなかった所をみると、そう馬鹿な人間ではないらしい。
その人間は子供を見ると驚いたようだったが、そっと抱き上げてどこかへ連れていった。
後には、また自分一人。
これでいい。
見捨てるどころか、保護する人間を連れてきてやったのだ。らしくない事に。
後は薬草を採って自分のねぐらに帰るだけ。
帰るだけ、なのだが…
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