かけがえのないあなた

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何故だろう、何か、とてつもない失態を犯してしまったような、気がする。 とても大切なものが、自分のもとから攫われてしまったような。 …まさか、あの子供の所為か? まだ幼かった幼獣の頃、母に聞いた話がふと蘇る。 『いい、ルディ?いつかきっと、貴方にも貴方が唯一無二だと思える存在が現われるわ。出会い方は判らないの。それは伴侶かもしれないし親友かもしれない。師という形かもしれないし、もしかしたら違う種族かもしれない。敵対しているかも。』  『今すぐにはわからないのですか、母様』 『そうね、わからないの。すぐに出会える場合も有れば、生涯出会うことなく終わる事もあるわ』 『…私は、父様と母様と兄様達が一緒に居てくれれば、それでいいです』 『ふふ、有り難うルディ。でもね、もし運命がその掛け替えのない唯一に引き合わせてくれたのなら、決して離れてはダメよ。片時も離れず傍に居たい、守りたい。明確な理由もなく、ただ貴方の魂がそう訴えたのなら…』 『訴えたのなら?』 「魂の叫びに従い、自らの片羽となる者と共に有れ」
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