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過ぎた愛情
『私だけは、いつもあなたを見てるから……』
そんな言葉を聞いたのを最後に、敏也(としや)は起き上がった。それと同時に、頭が鈍く痛んだ。
また、この夢か……。
その夢を見るようになってから、すでに四ヶ月が経つ。四ヶ月もの間、同じ光景を目にし、同じ声を聞き、そして同じ言葉で目を覚ますのだ。
私だけはいつもあなたを見てるから……か。
夢の最後の言葉を思い浮かべ、敏也はすぐに顔を伏せた。その事を考えると頭がさらに痛む。そうわかってはいるのだが、考えずにはいられないのだ。
あれから四ヶ月か。あっという間に時間が経ったな。俺の人生を変えた事件からもう四ヶ月だなんて、信じられない。
痛む頭に手を当てながら、敏也は事件を思い返し始めた。この行為はすでに日課であり、生活の一部となっていた。
決して忘れる事の出来ない、敏也の人生を大きく捩曲げた事件。全ての始まりは、六ヶ月前に遡る。
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