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夜の客人
ペタ……ペタ……
不意に廊下から、何かの音が聞こえてきた。フローリングを裸足で歩いているような、そんな音だ。ドアに窓のような物はなく、廊下の様子を見ることは出来ない。咄嗟に傍の置き時計を確認すると、時刻はすでに午前二時をまわっていた。
こんな時間に尋ねて来るような友人に心当たりはなく、恋人もこっそり遊びに来るような人ではない。そもそも玄関の鍵はしっかりとかけたはずだ。
一つの答えにたどり着いたとき、体を凄まじい悪寒が襲った。
ペタ……ペタ……
音は少しずつ大きくなっている。それと比例するように、息は荒く、鼓動は速くなっていった。
思わず、傍に置いてあった携帯電話を手に取り、友人に電話をかけた。しかし、少し待っても友人は出なかった。焦りながらも他の友人に電話をかけた。だが結果は同じだった。
そうしている間にも音は近付いてきた。なんとかして逃げなければならない、そう感じたが、ここは三階であり、窓から逃げることは出来ない。
隣の部屋の住人に助けを求めることも考えたが、入居時の挨拶以外はろくに会話もしていないため、いくら壁を叩いても迷惑に思われるだけだろう。
ペタ……
音が止まった。恐らくドアの前までたどり着いたのだろう。瞬きすらも忘れてドアを見つめ続けた。逃げることも、助けを求めることもやめ、ただドアを見つめた。
ガチャ……
ドアノブが音を立てて回り、ゆっくりとドアが開いた。
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