羨望

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   百合江は太ることを気にしているようで、休憩室でも決してお菓子に手をつけることはなかった。   『百合江ちゃんもどうぞ』と、主婦のパート社員に何度もチョコレートやら、クッキーやらを勧められても、百合江はニコニコと笑うだけで1度もそれに手を伸ばそうとはしなかった。  葉子も常にダイエットを公言しているものの、文字通りの『甘い誘惑』に勝てた試しがない。    休憩時間や退社時の化粧直しに関しても、百合江は怠ることがなかった。  ハンドクリームやリップクリームをこまめに塗る百合江の姿には、感心さえした程だ。   (それに引きかえ、私ときたら……)    葉子はうんざりした。    化粧らしい化粧もせず、指先も唇も荒れ放題。髪も無造作に束ねただけで、眉毛など整えたことさえない。極めつけのカーディガンの毛玉ときたらどうだろう――。   (間違ってるのは私の方かも……)    葉子は、自分の外見を見て去って行ったメル友達の気持ちが、何となく理解出来たような気がして淋しく微笑んだ。
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