1343人が本棚に入れています
本棚に追加
/62ページ
百合江は太ることを気にしているようで、休憩室でも決してお菓子に手をつけることはなかった。
『百合江ちゃんもどうぞ』と、主婦のパート社員に何度もチョコレートやら、クッキーやらを勧められても、百合江はニコニコと笑うだけで1度もそれに手を伸ばそうとはしなかった。
葉子も常にダイエットを公言しているものの、文字通りの『甘い誘惑』に勝てた試しがない。
休憩時間や退社時の化粧直しに関しても、百合江は怠ることがなかった。
ハンドクリームやリップクリームをこまめに塗る百合江の姿には、感心さえした程だ。
(それに引きかえ、私ときたら……)
葉子はうんざりした。
化粧らしい化粧もせず、指先も唇も荒れ放題。髪も無造作に束ねただけで、眉毛など整えたことさえない。極めつけのカーディガンの毛玉ときたらどうだろう――。
(間違ってるのは私の方かも……)
葉子は、自分の外見を見て去って行ったメル友達の気持ちが、何となく理解出来たような気がして淋しく微笑んだ。
最初のコメントを投稿しよう!