00:ぷろろーぐ

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00:ぷろろーぐ

気付いたら、僕は天井を見つめていた。 ――これから、君の世界を殺す。 僕にとって、恐怖の象徴でしかない誰かが、影となって、そう呟く。 誰だっけ。思考は胡乱として一向に纏まらず、ただその影の呟きだけはすんなりと入ってきた。 ――君が生きるこの世界は、君に優しくないから。 何度も思った。無意識に肯定する。去来するのは数々の悲壮と絶望と、憧憬。 ――だから、これから君の世界を殺すよ。 世界が死んだら、その世界に生きる僕はどうなってしまうのだろう。 そんな当たり前の疑問も、ぼんやりと霞んで消えて。 ――けど、それは悲しいことじゃない。 当たり前のように、答えだけが浸透していく。 ――きっと、新しい世界は君に幸せを教えてくれるだろうから。 なら、抗う理由は無い。瞼が落ちる。 ――『そうしたらまた――』 僕の意識はその言葉を最後に途絶えた。
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