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凄い長い沈黙だった。体感にしておよそ三ヶ月にも及ぶほど苦痛な硬直。
楓君は反省した。それはもう半端なく反省せざるを得なかった。
とりあえずごめんなさいと謝りたい、猛烈に謝りたい衝動に駆られる。
でも謝らない! ここで謝ったら本末転倒、連行されるのは目に見えている。
ならば俺は胸を張ろう。この胸を張って前だけを見ていよう。
「ふっ」
鷹が居た。高所からねめつけるようにして獲物を物色する鷹の目をした怖いおにぃーさんが僕を見てた。
なんとか虚勢を総動員してニヒルに鼻で笑って視線だけは逃げたけど……正直全てにおいて逃げたい。
でも人質の拘束がね、できないからね、丸腰で突っ込んだら確実に捕まるからね、どうしようね?
下を向くと冷や汗が水溜まりを作っていました。
確定的な未来が即席湖の波紋に浮かんだ。二文字で表現すると王手。三文字だと詰んだ。
絶望にうちひしがられながらも攻防を続ける自分は多分、無駄な抵抗でもなんでも諦めたくないのだろう。
単純になんかしてないと気が狂っちゃうからなんだけど……あ、掴めた。
「うそーん?」
あれだけ苦戦したのが嘘のように、それはもうあっさりと、女の子を後ろ手にホールドすることができた!
首の皮一枚繋がった!
可笑しいと思ったら無抵抗!
これは協力してくれるってことかな! ことだよね?
「どうした黒服。俺様はそこを退けと言ったんだぜ? 俺様が邪魔だといったら貴様ら愚民はモーゼばりに道を開けるのが礼儀ってもんじゃないか? あん?」
安全が約束されたら、もう楓君なにも怖くない。
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