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「もうこんな時間!? 急がないと遅刻しちゃうわっ! いってきまーすっ」
バタン。勢いよく玄関の扉を閉めた『俺』鶴来楓<ツルギ カエデ>はパッサパッサの未トースト無味の素材そのままの味しかしないパンを食わえて通学路を──いや、近道を爆走していた。
遅刻かどうかは秒単位を争う状況だ。
俺は一本の矢の如き猛走で公園を貫通し、横道から薄暗い裏路地に入りくねくねと複雑な道程をスピードを緩めることなく進んでいく。
さっきからパッサパッサの食パンが微妙な欠片を目に飛ばしてきて煩わしい。というか痛い。
正直走りながら食べようとすると息が詰まる……いや、こうやって食わえてるだけでも息がしづらいし、水分的な罠も目に見えてるこの食パンは邪魔臭い。
何故こんなもん食わえてきたんだ俺!!
「ふがふがふぁ。ふぃふぉふふぉふぃふぇふぁ、ふぁんふぉふふぁふぇふぁふぃふぁふぇふぁボフッ、ゲフッ」
訳:説明しよう。遅刻の間際は出会いイベントのフラグだ! 俺の圧倒的な主人公力が今日は出会いがあると告げ(ここでパン屑が喉に詰まり中断)ている。よって、俺は来るべき出会いに備えて食パンを装備した正装をしていなければならないのである!
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