01:楓「あそこで道を踏み外していたら別作品になる所だった」

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  つまりそういうことだ。 俺は(口の)中はトロトロ、外はパサパサの食パンを口にしたまま路地を抜けて最後の角を曲がる。 その時、猛スピードで旋回した際に掛かったG(ガン〇ムではない)が食パンの耐久力を零にした。 「目がぁぁぁ、目がぁぁぁっっっ」 口先に僅かな長さだけ残して凄まじい勢いで吹っ飛んだパンの、しかも角があろうことか俺の円らな瞳にスマッシュヒットした。同時に吐き出したパンの角がもう片方の目に追い討ちをかける。 「くっ、連邦のモビ〇スーツは化け物か!?」 こんな奇跡ってない。痛い、猛烈に痛い。まず泣いた。次に泣いた。そして泣いた。 涙が瞳と食パンの接着剤になった。繊細な粘膜にそんな乱暴に触れられたらあたし……あたし新しい世界がっ──思考が止まった。でも痛みと足だけは止まらなかった。 例え視界が真っ暗でも……道は、必要な知識は身体が覚えている。 「伊達や酔狂で場数をこなしていると思うな、よっ!!」 ドンッ。 なんか『よっ!!』の所で何かに激突した気がする。で、『よっ!!』が掛け声みたいになって瞬間的に平時よりも力が強くなったのか、結構冗談にならない勢いで弾き飛ばしたような気がする。 あと、心なしか柔らかかったような気がする。  
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