709人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
いつもと同じ様に馬鹿みたいに澄みきった冬の空…
いつもの様に眩しい太陽…
冷たい風に身を震わせふと手袋をしていない自分に気づく…
『手袋持って出たかいのぅ?』
俺はカバンの中をまさぐった。
ウォークマンとお気に入りの私服と読み慣れた雑誌が入っているだけで………手袋は無い…
機嫌の悪い俺は舌打ちした。
自分の用意の悪さに苛立ちながらも冷えきった左手をぶっきらぼうに学生ズボンのポケットに捻りこみ空いた右手で煙草を取りだし慣れた手つきで煙草に火をつけた。
思いきり煙りを吸い込み吐きだす。
口から出た白い雲が吐息か煙草の煙りかは分からないが白い雲が空を舞い…消える…
『いっそ俺も消えてしもうたら楽になるんかいの?』
さっきからの苛立ちは時間が経つごとに勢いを増し加速度的に増えている…
煙草では間に合わないようだ。
今朝の出来事を自分の頭で整理していくにつれ怒りなど通り越し虚しさだけを帯び自我を蝕んでいく。
『よりによって何で俺なんなら?はがええのぉ…理不尽じゃ』
何故こんなにムカつくのか自分自身分かっていた…
人間経験していない事であっても自分なら解決できる乗り越えられる的な一種の固定観念と言うか根拠の無い自信を持っていたりするものだ。
スポーツをしてれば『俺が一番凄いんだ❗』
的な…
多分誰しも少なからず根拠の無い自信はあると思う…
残念ながら見事に俺もそのタイプだったらしい。
一人でも生きていける…むしろ一人が良い…これが俺の素敵な勘違い。
俺は親が嫌いでたまらなかった。
理由は小さい頃から二日に一度朝から晩まで仕事と偽ってパチンコを打ちに行き借金をこしらえて金融会社を二桁以上自転車し家の電気やガス…挙げ句の果てには水道さえ止める信じれ無い光景を産み出した張本人だからだ。
家のドアをヤのつくオッサンが叫びなから『早よぅ金返さんかおどりゃあ‼居るのは知っとんじゃけぇのぅ❗往生せんか ‼』
と叩いたり親戚にも家賃の肩代わりを頼んでいたから同じ様にドアを叩かれた。
まぁそんなの半年すれば慣れるもので…まぁ慣れても親を許すなんて寛大な心は俺には全く無かった。
そんな親でもやっぱり親…しかし両親の喧嘩は毎日絶えずこの日もいつも通り喧嘩に発展した。
最初のコメントを投稿しよう!